今日は先になろうで掲載した話も同時にアップしています。
こちらでだけ読んでいるという方は、まず前話をお読みください。
お爺さん司祭様視点です。
村へと帰る朝、わしはまだ夜が明けきらぬ内に貴賓門を開けてもらい、イーノックカウを後にした。
と言うのも、昨日から妙な胸騒ぎがしたからだ。
「まさか、すでに馬車を完成させておったりはせぬだろうな」
わしは馬を走らせながら独り言ちる。
ヴァルトからはルディーン君はすでに放出系の魔法を使う事ができる魔法陣を手にしていると聞いた。
ならばもしあの子がそれを使えばフロートボードの魔道具が作れることに気づいてしまえば、わしが止める間もなく魔道リキッドで動かせる馬車を作ってしまうであろう。
イーノックカウでこまごまとした用事を済ましている間もその事が頭から離れなかったわしは、その心配から年甲斐もなくこのような早朝から馬を飛ばして村へと向かっておると言うわけだ。
「門が見えてきたのぉ」
朝早くに出たが、年には勝てず休憩を多めにとったために村へとたどり着けたのは昼近く。
だがそれでも当初の予定よりはかなり早く着けたようだ。
しかしそれはあくまで予定よりは早く着けただけという話であり、間に合ったかどうかは別だ。
「とにかく、急いで確かめねば」
村に入ったわしは、門番をしておった村人に村の神殿まで馬を連れて行ってもらえるよう頼むと、そのままカールフェルト家へと急ぐ。
するとそこには完成した馬車はなく、とりあえずは一安心。
ところが。
「はて、これはなんだ? 前に来た時はこの様なものは無かったはずだが」
カールフェルト家の裏、台所に面したところにわしがイーノックカウに出かける前には無かったはずの見慣れる石でできた建造物ができていた。
一見すると台座のついた石棺のようだが、そのようなものを家の横に作る者はおるわけがない。
それにその石棺の横にはそこへと上がるための階段と踊り場が作ってあり、その上そこまで何かを吊り上げるためか、滑車までついているではないか。
となると、これは収納棚の一種か? だが、それならばなぜあのような位置まで持ち上げる必要がある?
わしは目の前のものが何に使うものなのか思い浮かばず、一人首をひねっておったのだが、
「司祭様、お帰りなさい!」
そんなわしのところへ、声が聞こえたのかルディーン君が台所のドアから飛び出して満面の笑みで出迎えてくれた。
「うむ、ただいま」
その元気な姿にわしは頬が緩む。
うむ、子供はやはり元気が一番じゃな。
そう思ったわしは、どれ、頭でも撫でてやろうかと思ったのだが、どうやらまだ食事の最中だったらしく、ルディーン君はカールフェルト夫人に叱られて家の中へ。
……わしのこの差し出した手は、どうすればよいのかのぅ。
カールフェルト夫人に招き入れられたわしは、出されたお茶を口にして一服。
そこでわしは、先ほどから気になっていた外にある建造物の事を聞いてみたのだが、すると予想外の答えが返ってきた。
「ああ、あれは水がめですよ」
水がめ? あれは水を入れて置くためのものだと言うのか? だが、それにしては大きすぎると思うのだが。
それにわざわざあのような高い位置に置く理由もわからん。
そこでわしは、なぜあのような水がめを作ったのかと問うてみたのだが、するとその答えは別のところからもたらされた。
「それはねえ、入れたお水をきれいにする魔法の水がめだからなんだよ」
いつの間にか食事を終えていたルディーン君が、さも得意そうにそう教えてくれたのだ。
そして彼は、続いてとんでもない事を言い出しおった。
「あの水がめはねぇ、ピュリファイって魔法が使える魔道具がついてるんだよ。それを朝と夜の二回使えば、中のお水がずっときれいなままなんだ」
「ピュッ、ピュリファイとな!?」
馬鹿な! なぜルディーン君がその魔法を知っておるのだ?
ルディーン君は錬金術ギルドのマスターから教えてもらった魔法陣を使って外の水がめを作ったのだと得意そうに語っておるが……ふむ、予想とは違った形ではあったが、やはり手に入れた本から魔法文字を学び、新たな魔法陣を構築しておったか。
と言う事は、フロートボードに使うという考えには至っておらなんだという事か。
そのことにほっと胸をなでおろしたのだが、今はそれよりピュリファイだと思い直す。
ピュリファイという魔法は、戦場跡などのアンデッドが闊歩する不浄の地を浄化する魔法として貴族や兵士の中に走っておる者も多かろう。
だがこのような村では墓も小さく、そこで生まれる死の魔力は生者の気や日々の日の光によって浄化されるからピュリファイが使われた事などないはずなのに。
そして何より問題なのがその使われ方だ。
なぜピュリファイで水を浄化できることをルディーン君が知っておる? あれは神殿でもごく一部の者しか知らぬことだぞ。
水の浄化。これをなす魔道具は神殿の重要な収入源の一つとなっておる。
この魔道具が開発されるまでは城や砦、それに大きな館などでは水に大変苦労しておった。
なにせ使われる量が民家のそれとは桁違いだ。
それだけに井戸で汲み上げるだけでは到底賄いきれず川などから樽に詰めて運び込んで使っておったのだが、夏などはその水がすぐに悪くなるためかなり苦労しておったそうだ。
だがこの魔道具ができた事により大量の水をためておくことができるようになった事でその問題は一気に解決したのだが、それは同時にこの魔道具なしでは城や砦は立ち行かぬようになったともいえるのだ。
そしてこのピュリファイという魔法は治癒魔法と同じ神官が使う神属性の魔法であり、その使い手は神官以外殆どおらん。
それにこの魔法は不浄の地を浄化する魔法として広く知られているために、この魔法によって水を浄化されているというのもまた、神殿でしか知られてはおらぬはずなのだ。
それなのに。
わしは予想もしていなかった事態に、軽くめまいを覚えるのだった。
ちょっと短めですが、このまま続けると倍くらいになりそうなのでここまでで。
まぁ、いつもの通りなろう掲載時はもうちょっと文字数が増えると思いますがw